早稲田大学国語教育学会が設立されたのは、1963年10月のことでした。
10月5日に開催された設立総会の案内状は、同年9月15日付けで世話人代表である川副國基氏のお名前で出されています。
そこには、「母校の国文の先生方と現場の国語教育に挺身しておられる校友の方々との、親しい交流の上での研究をもちたい」という意識が明確に示されていました。さらに案内状には、「研究と懇親との二つの意味で、皆さんふるって御入会下さって」という文言があります。すなわち本学会の設立当初の趣旨として、早稲田大学の国語国文学研究者と教育現場の国語教育担当者との「親しい交流の上での研究」と「懇親」が目指されていたのです。この設立当初の趣旨こそが、その後の学会の一つの特色となったように思われます。
2013年に、本学会は設立50周年という記念すべき節目を迎えることができました。長く学会を支えてこられた多くの関係者の皆さまに、学会を代表して心から感謝の気持ちをお伝えいたします。この50年の間に世の中は大きく変わりましたが、教科の内容学としての文学・語学研究と教育学としての国語教育研究との交流、そして研究と実践との交流という学会の基盤となる理念に関しては、設立当初と変わることはないはずです。
2013年現在、年に4回の例大会が開催され、機関誌『早稲田大学国語教育研究』が毎年刊行されています。また学会の分科会活動として「国語教育史と実践に学ぶ会」「古典教育研究会」「朗読の理論と実践の会」が、さらに支部活動として「愛知県支部」が、それぞれ活発な研究活動を展開しているところです。ご関係の皆さまにはどうかこれらの活動に積極的に参加されて、次の50年に向けて新たな学会の歴史を築いていただくことができれば、これに過ぎる喜びはありません。
2013年10月
代表委員 町田 守弘
(学会設立50周年記念CD収録/事務局作成資料)
学会設立当初からの活動記録を一覧できる資料です。
例・大会の発表者・題目のほか、会報・機関誌の目次をご覧いただけます。
本学会では、50周年にちなみ、年頭よりさまざまな取り組みを行ってきました。
その一環として、1月例会より始まったテーマ研究は、近代・古典と、
発表・講演を交えつつ開催され、6月22日(土)には、50周年記念大会を開催いたしました。
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第254回 例会 1月19日(土)
トレンドから定番へ
―「羅生門」教材史研究の空隙―
東洋大学 幸田 国広氏
「羅生門」の現在
都留文科大学名誉教授 関口 安義氏
第255回 例会 4月20日(土)
物語教材の扱いをめぐって
早稲田大学本庄高等学院 吉田 茂氏
〈講演〉古文定番教材雑感
早稲田大学名誉教授 吉田 幸一氏
256回 50周年記念大会(教育・総合科学学術院共催) 6月22日(土)
〈シンポジウム〉
「国語教育のこれまでとこれから――学会設立50周年からの展望」
早稲田大学名誉教授 東郷 克美氏
東京学芸大学名誉教授 田近 洵一氏
学習院大学 岩ア 淳氏
司会 早稲田大学 町田 守弘氏
〈講演〉
「一語一会」
早稲田大学名誉教授 榎本 隆司氏
〈総会〉
〈懇親会〉於高田牧舎
50周年記念大会の参加人数は、150名を超え、学会の節目にふさわしい大会となりました。
大会前半は、当学会代表委員でもある町田守弘先生が司会・コーディネータをつとめるシンポジウムが行われました。
学会50年の足跡とこれからの展望をテーマとしたシンポジウムには、東郷克美先生・田近洵一先生・岩ア淳先生を迎え、画期的なご提案がなされました。
また、大会後半は、草創期より本学会に貢献され、立て看板をご執筆くださっている榎本隆司先生による「一語一会」と題するご講演で、川副國基先生との貴重なエピソードを交えつつ、学会設立当初からの様子が来場者に語られました。
ご講演は、「人との出会いは言葉との出会いである」と結ばれ、会場はおおいに盛り上がりました。
以下に、その模様をご紹介します。
50周年記念大会の模様 6月22日(土)14時半より
シンポジウムの模様
国語教育のこれまでとこれから――学会設立50周年からの展望」
東郷先生ご提案
田近先生ご提案
岩ア先生ご提案
榎本先生 ご講演の模様 「一語一会」
50周年記念大会 代表委員より閉会の挨拶
秋季の学生会員研究発表会をはさみ、年が明けた1月25日には一月例会が行われました。
50周年記念事業の締めくくりは、日本語学。
1963年の学会設立後、初めて行われた例会で白石大二先生が発表されたテーマ(1963年11月、第一回例会発表題目「語学教育と国語教育」)と同じものです。
本学会の50周年を締めくくり、また新たな第一歩へと踏み出すべく、事務局により設定されました。
2014年1月例会は、東京学芸大学附属高等学校の浅田孝紀氏による「アーティストとの協働で作る言語文化創造の授業―古典和歌を素材とする新たな歌物語の創作・上演を中心に―」と題する画期的な研究発表と本学元教授岩淵匡先生をお招きした講演会「日本語についての独善や誤解―教育・研究以前の問題―」の二本立てで行われ、盛会のうちに50周年記念事業は終了しました。
3月末に刊行された『早稲田大学国語教育研究』34集は、50周年記念大会講師・シンポジストの先生方をはじめ、数多くの先生方にご執筆いただき、総頁数152頁と大変充実した内容の集となりました。
さらに会員のみなさまには、この設立50周年の記念に「早稲田大学国語教育学会 学会設立50周年記念CD」と題した、国語教育学会会報や学会設立当初の資料や例大会案内はがき・学会活動記録などを収録したデータCDをお送りいたしました。なお、学会活動記録はこちらのホームページからもご覧いただけます。ご活用いただければ幸いです。
題字:榎本骼i/ジャケットデザイン:野村正則
〒169-8050
東京都新宿区西早稲田1-6-1 早稲田大学教育学部内 早稲田大学国語教育学会事務局